ドナルド・トランプはいきなり戒厳令から出すような政治家ではない。乱暴に見える言葉と行動も保守シンクタンクと学界の論理開発、キャンペーンなどを経て、緻密な計算に基づいてするケースがほとんどだ。

出生市民権（米国で生まれれば自動的に市民権を付与する制度）を行政命令で覆す試みも同じだ。韓国メディアでは「移民者を追い出そうという反憲法的政策」として扱ったが、米国の一部の保守法学者の長い挑戦課題の一つだ。

米国の保守法学者らは「米国で生まれて、米政府の公権力（管轄権）に従属する場合に市民権を付与する」という米国修正憲法１４条を文字をそのまま読もうというキャンペーンを寄稿や出版を通じてしてきた。

核心は「公権力への従属」だ。修正憲法１４条改正当時、上院議員らはこれを「国家に対する国民の政治的・全体的献身」と規定したという。外国人が米国の交通法規に従うのとは異なる次元の服従と献身をする場合に市民権を与えるという趣旨だと、米国の保守法学者は解釈する。生まれたという理由だけで外国人にも無差別的に市民権を与える制度は従って違憲という結論だ。

トランプの法律策士であるジョン・イーストマン元チャップマン法大教授は２０年ほど前の寄稿で「出生市民権は特定の地に生まれたという理由だけで王に対する忠誠を要求する英国封建法の残滓」と指摘する。

米国の市民権政策の未来は米国国民が決めることだ。実際、市民権に対する保守主義的な解釈は疑わしい部分もあり、米国法学界内で少数説にすぎない。ジェラルド・ノイマン・ハーバード法大教授は「出生市民権こそが外国人搾取を永続化するカースト制度を防げる」と反論したりもする。

あえて米国の市民権論争を書いたのは、トランプ政治には突発変数が少ないということを言うためだ。即興的に見える決定も米国社会で数十年間蓄積された論争の一つの軸から派生した政策だ。別の言い方をすればトランプは予測可能な路線を走るリーダーということだ。激しい言葉は老練な商人としてショーマンシップにすぎず、政策の構造は米国保守が敷いたレールを疾走する。

大韓民国が「トランプショック」を賢く突破する道はここにある。予測可能な人物なら恐れることはない。論理と歴史を追跡すれば次の行動に備えることができるからだ。大韓民国号が今は荒波に揺れていても、トランプ台風を乗り越える力量は十分にあると信じる。

パク・ヒョンジュン／国際部記者